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第4回ピンクリボンアドバイザー認定試験講評

乳房健康研究会

ピンクリボンアドバイザー試験の報告と学んでいただきたい事がら  福田 護

2013年12月、ピンクリボンアドバイザーの試験がスタートしました。ピンクリボンアドバイザーには、初級、中級、上級があります。現在、初級では4,350人 中級では835人のピンクリボンアドバイザーが誕生しています。2014年12月14日、はじめて中級試験を行ったことより、ここでピンクリボンアドバイザー試験について報告します。

【初級】初級は、乳がんの基本知識を身に付け、自分自身の健康管理に役立てたり、家族や友人・知人など身近な人に乳がん検診を勧めたりすることができる人です。初級試験では、公式テキストである「ピンクリボンと乳がんまなびBOOK」の各章の冒頭と最後に掲載されている、「まなびのポイント」と「確認ポイント」を正確に理解できていることが求められます。初級試験は既に3回行われており、その総計は試験申込者4,739 人、受験者4,442人、合格者4,350人、合格率97.9%でした。多くの方にピンクリボンアドバイザーなっていただくことが大切と考えています。そのため、難しい試験にしていないことが、試験結果にもあらわれています。

【中級】中級は、初級よりさらに深い知識を身に付け、職場や地域の人々に乳がん検診を勧め、乳がんの正しい知識を伝えることができ、乳がんに関する様々な問題を解決し、その解決のために行動ができる人です。ピンクリボン活動に関わるスタッフとして積極的に行動してくれる人です。中級試験では、公式テキストとそれを補うDVDで学習していただくことになっています。DVDでは、乳がんに罹った2人のストーリーを追うことで、乳がん医療の現状やピンクリボン活動などについて、深い知識を得てもらうようにしています。教材は、医療従事者以外の方にも理解できように心がけました。

中級試験では、知識を直接聞くのではなく、ピンクリボンアドバイザーとしてどう考え、行動するかという視点を盛り込みました。医療職以外の人にも配慮したため、試験内容がやや簡単になり、平均点が86.6点と、合格点80点を上回る結果でした。試験申込者1,090人、受験者1,034人、合格者835人、合格率80.8%でした。合格率をみると、医療者が89.4%、医療以外の人が72.0%でした。各設問は、中級の方には是非理解して貰いたい内容になっています。各設問の妥当性は正答率や識別指数などにより評価しました。この評価を基に、今後さらに良い問題を作っていきます。

ここでは、正答率が低かった問題を中心に、ピンクリボンアドバイザーに理解しておいてもらいたい事柄を列記します。

1.乳がん検診の目的は「予防」ではない 乳がん検診の目的は乳がんを早期発見し、死亡率を減少させることです。乳がん検診は乳がんの予防にはつながりません。乳がん検診を受けて乳がんを予防しましょうと話してはいけません。

2.若い人にむやみに乳がん検診を勧めない対策型の乳がん検診では、乳がん死亡率減少効果が証明されている方法を用います。この効果が証明されているのは、40歳以上の女性に対するマンモグラフィ検診のみです。検診には不利益がありますので、若い人にむやみに勧めるのは良くありません。

3.被ばく線量を少なくするために圧迫するマンモグラフィを行うとき、乳房を圧迫して伸ばすのは、少ない被ばくで鮮明な写真を撮るためです。マンモグラフィは痛いと言われることが少なくありません。検診を勧めるときは、乳房を圧迫する理由を伝えて下さい。

4.家族内に乳がん経験者がいても遺伝性乳がんとは限らない家族内に乳がんが多くても、乳がん遺伝子検査で異常がない場合は遺伝性乳がんではありません。家族に乳がんの人がいる乳がん患者さんは、遺伝性の乳がんであると、決めつけては絶対にいけません。

5.重要な指標となる数字をきちんと理解し、使いこなす 精密検査が必要とされた人のうち本当にがんであった人の割合を陽性反応適中度といいます。検診の質を評価する方法の一つです。一般的に3-5%(20-30人に1人)です。乳がん検診の精度を示す、いくつかの重要な指標を理解して下さい。

6.さまざまな診断法の特徴と限界を理解する 画像診断では、乳がんの組織型やサブタイプは分かりません。 穿刺吸引細胞診では、目的の細胞が十分に取れないことがあり、偽陰性になることが少なくありません。それぞれの診断法に限界があることを理解して下さい。

7.診断法ごとの仕組みを理解する MRIは放射線を使用しないため、放射線被ばくはありません。放射線を使わない診断方法があることを理解して下さい。

8.乳がん細胞の遺伝子の特徴から分類するサブタイプ 患者さん自身の乳がん細胞の遺伝子の特徴を検査し、その結果からサブタイプに分けて、患者さんに合った療方針を決めています。サブタイプには、ルミナールA、ルミナールB、HER2、トリプルネガティブなどがあります。サブタイプ分類は、乳がん患者さんの常識になっています。正確に理解して下さい。

9.乳がん組織の形で分ける組織型分類は系統立てて理解する 乳がんには、顕微鏡で見た乳がん組織の形で分ける、組織型分類があります。組織型分類では、まず非浸潤がん、浸潤がんに分けられます。浸潤がんは、乳頭腺管がん、充実腺管がん、硬がん、特殊型などに分けられます。組織型分類を理解して下さい。

10.ステージ0でも、がんの広がりが大きい場合は全摘になる ステージ0の乳がんでも、広く広がっている場合があります。この場合は、乳房切除(全摘)を行います。近年、乳房切除手術と同時に行う乳房再建(一次乳房再建)が行われることが多くなりました。

11.乳腺組織が多い場合、マンモグラフィで写りにくいのは「腫瘤」乳腺組織が多い場合、マンモグラフィでは乳房のしこり(腫瘤)が見えにくくなります。白く写る乳腺組織の中に、白く写る腫瘤が隠れてしまうためです。石灰化も白く写りますが、乳腺組織より白さが強いため、乳腺組織の中でもよく見えます。乳腺組織が多い乳房では、マンモグラフィで乳がんのしこりを発見できない場合があることを理解して下さい。

12.マンモグラフィ検査を受けられない人もいますマンモグラフィ検査は約15分かかります。男性に行うことが可能くらいですから、小さな乳房ややせた女性にも可能です。ただ、乳房を挟むため、心臓のメースメーカーがずれたり壊れたりする危険があります。少数ながら、マンモグラフィができない人がいることを理解して下さい。

最後に、ピンクリボンアバイザーは、乳がんにやさしい社会を支える人です。正確な知識と高い志と広い心で、積極的にピンクリボン活動を行って下さい。