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【質問】10月20日に公表された、米国がん協会の「乳がん検診45歳に引き上げ」の新指針についてご質問を受けた場合はどのように答えればよいでしょうか。

回答

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米国がん協会マンモグラフィ検診推奨45歳への引き上げに関して


2015年10月20日、米国がん協会(American Cancer Society ACS)は、マンモグラフィ検診の対象を40歳から45歳に引き上げました。 その理由の1つ目は、40歳代前半の乳がん罹患率が、比較的低いことです。日本と違い、米国の年齢別乳がん罹患率は、閉経後に高くなります。


2つ目は、乳がん検診の不利益です。40歳代は乳腺組織が多く、マンモグラフィでは高濃度乳腺や不均一高濃度乳腺の頻度が高くなります。高濃度乳腺や不均一高濃度乳腺では、腫瘤が乳腺組織に隠れて発見しにくくなり、マンモグラフィの感度が下がり、乳がんを見落とす危険性(偽陰性)が高くなります。


また、高濃度乳腺や不均一高濃度乳腺では、乳がんの見逃しを防ぐため、乳がんでない人を要精検として(偽陽性)扱う率が高くなります。さらに最近、マンモグラフィ検診では、治療しなくても良いような乳がんまでを発見しているという過剰診断が、問題となっています。


このような、偽陰性や偽陽性や過剰診断などの不利益を考えると、相対的に乳がん頻度が低い年齢層に、マンモグラフィ検診を行うのは問題があると考えられました。 日本では、40歳代の乳がん頻度が相対的に高いことが問題です。


さらに、日本女性は高濃度乳腺や不均一高濃度乳腺の頻度が高いことも知られています。そこで、40歳代を対象とした大規模な臨床試験(J-START)が行われました。その結果、マンモグラフィに乳房超音波検査を加えると早期乳がん発見率が1.5倍になることが分かりました。世界初の研究であるJ-STARTの成果に、海外の新たな研究結果を加えて、日本の40歳代検診が再検討されていくことになります。この結論が出るまでは、日本では40歳代に対して2年毎のマンモグラフィ検診±視触診が行われます。